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「日本永代蔵」

Shiba7編集室 (担当:柴原)

井原西鶴作「日本永代蔵」 巻の四 第二章 その二

「心を畳込む古筆屏風」=筑前に隠れなき船持、クモの糸のかかるためしも=

前回は、筑前の国博多に住む貿易商人金屋のお話。豪商金屋が3回の台風で舟が沈没、財産をなくし、呆然としていたが、クモが巣を粘り強く張っていくことに刺激され、起死回生の長崎下り。商売は思うにまかせなかったものの、なじみの太夫が所有する古筆屏風をもらい受け、それを元手に再起するという展開でした。金屋さんの目利きとぬかりのなさが評価されてめでたしめでたしということで終わったのですが。・・・

日本永代蔵の面白さは、やはり西鶴翁の独り言、話の前か後に必ずついている薀蓄です。お話にちなんだ話題が書かれています。今回も金屋さんの商売に関係のある船と中国商人についてです。この頃は結構航海術も進歩して、航海の安全性も高まり、世に船があるからこそ十日に千里の沖を走って荷物を運ぶ、万事自由に用を足せるのだと、舟の信頼性が高まっていたようです。

大洋を航海して広い世界を知ることが大商人に至る道、わが家の前の細い溝川を一足とびに超えて、宝の島に渡ってみなければ大富豪にはなれない。広い世界を知らない人は残念なものだ。とこんなことを言っています。さらに西鶴翁は、中国人の評判の良さを指摘しています。身内びいきが世の常なのに西鶴翁は世の中を良く見ていること、確かです。

中国人相手の投資は大胆でなければ出来ないが、おおむね中国の人は正直だ。いわく、中国人は実直で口約束にも間違いなく、商品をごまかしたりしないし、お金もちゃんと払う。この点に変わることがない。

それに反して、ずるくて欲深なのは日本人で、しだいに針を短くし、織布の巾を縮め、傘にも油を引かず安上がりなのを第一とする。そして売り渡すと後はどうなってもかまわない。昔、対馬行きの煙草といって、小さな箱入りのものが大流行し、大阪でその職人に刻ませたところ、当分は分からぬだろうと手を抜いて、下に積む荷に水までかけて渡したものだから、輸送中に固まり、吸えなくなってしまった。

これでは中国の人も怒りますね。その翌年、なおまた前年の十倍も注文してきたので、欲に目がくらんだ連中が、われが先にと急いで送ったところ、大分港に積ませておいてから、「去年の煙草は、水に濡れていて役に立たなかった。今年は湯か塩につけてみなさい」と、全部突っ返されてしまった。ことほど左様に、人をだます仕事は後がつづかぬ、正直であれば神のおぼしめしもあり、清廉潔白なら仏も心を照らしてくれる。正直にやりなさいよというお説教でした。

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