井原西鶴作「日本永代蔵」巻の四第三章
Shiba7編集室 (担当:柴原)
井原西鶴作「日本永代蔵」 巻の四 第三章
「仕合せの種を蒔銭」
=江戸にかくれなき千枚分銅屋、そなはりし人の身の程=
伊勢参りといって、伊勢には多くの人が訪れるが、相の山にいる乞食が満足するほどの銭を恵む人はいなかった。ある時、小さな両替商いから身を起こした江戸堺町の分銅屋が、道の地面が見えないほどに銭をまき散らし、人々を驚かせた。
「いったいどんな長者なんだろう」と、その名を訪ねると分銅屋の何某という、世間に名を知られていない金持ちだった。世間には、金もないくせに見せかけばかり飾って商売する、空大名のような商人が多いが、この人は、表向きは軽く見えても身代はしっかりしており、暗がりに鬼をつないだような、薄気味悪いほどの実力があった。
そもそもこの人の商売の始めは、都伝内の芝居小屋の近所に、九尺間口の店を借りて銭店を出し、見物人たちが木戸札を買う小銭を両替していたが、銀二匁、三匁のうちに、五厘、一分ずつ両目を少なく量ったので、少しのこととはいえ積もれば大分の利益を得、しだいに栄えて両替屋となった。これこそ世にいう楠分限、根の揺るぐことのない身代。
*「日本永代蔵」井原西鶴作・岩波文庫より抜粋
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